【書籍】貴志祐介「悪の教典」 レビュー

貴志祐介さんの悪の教典、上下巻読了しました。おもしろすぎて駆け足で読んでしまいました。
以後、感想(レビュー)ですが、もろネタバレしてます。

カリスマ先生、実は殺人鬼でした。

『サイコパスであるハスミンこと蓮実先生がカリスマ先生として教師や生徒に慕われていながら裏で情報操作して自分の好きな世界を創り上げていく』
といった内容です。

上巻はまだ静かな殺人鬼。読んでいて不謹慎ながら殺しちゃうのかな殺しちゃうのかな?
とちょっとワクワクまじりで読んでたんですけど……
下巻……血の海でした。

真相に手が届きつつあった生徒、圭介をハスミンが殺害。その圭介の携帯でやった情報工作を完全に奴隷化した美彌が目撃。そして美彌殺害を計画、実行に移したら別の生徒に発見され。そこから殺戮ショー。

木の葉を隠すなら森の中、死体を隠すなら死体の山を築けばいい

ってことで散弾銃で生徒40人を片っぱしから殺害していきます。美彌を殺すときは、マジで殺すのか……と思ったんですが、そこはやはり本人も気づいていないためらいが。彼からしてみれば、せっかく完璧に奴隷化した生徒を殺すのは惜しい、というだけだったのかもしれませんが。。

ラストどうなるかなぁと思ってたら、まさかの生き残りエンド。絶対、自分の作った罠にハマって死ぬと思ってたんだけどなぁ。めちゃめちゃ頭のいいハスミンが、あの雄一郎の罠にサクっとハマったのは少々解せないところではありますけど。

貴志祐介作品中最強キャラ、怖いけれども憎めないサイコパス「ハスミン」生まれる

それにしても今回の悪の教典の主人公であるハスミンこと蓮実先生は、貴志祐介作品最強のボスキャラでしたね。

父親が医者という環境で(殺すために)医学知識を身につけ心をエミュレートすべく心理学を身につけ、京大に学ぶべきものはないと1週間で退学して海外留学。アメリカの金融業界でトレーダーとして活躍しつつも謀略にはまり日本に戻り。。アメリカで身につけた英語力、ディベート力、そして射撃術で日本に帰って活躍(爆)するわけです。

外見がかっこいいっていうのもむろん重要だと思います。そんな人が実生活に溶けこんで、裏で人殺しまくってたらホント恐怖ですよね……。でもなぜかこのハスミンには怖さよりも痛快に人殺しを楽しんでいる様を脇で覗きたくなるような、不謹慎な感情を抱かずにはいられません。

ここまで露骨ではないにしても、ハスミンのような俗にいうサイコパスっていう存在は確実に存在するわけでリアルに考えるとやっぱり怖いんでしょうけどね。その辺のリアルな怖さがラストにそっと出てきてゾッとします。

この作品、唯一の救いはハスミンの奴隷になっちゃってた美彌が屋上から突き落とされてても生きてたってことですかね。

作品全体としてグロいので「新世界より」よりは読む人を選ぶかなと思います。けど面白いので読んで欲しいな。
傑作です。

悪の教典〈上〉 (文春文庫)
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※電子書籍配信調査 2018-12-09


悪の教典〈下〉 (文春文庫)
電子書籍配信中

※電子書籍配信調査 2018-12-09


祝映画化!映画観ました。ほらやっぱり映像化したよ。

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makapy
ゲームと本と映画が好き。日常の生活で買ったり使ったものを紹介しています。

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  1. 悪の教典/貴志祐介

    ◆読んだ本◆
    ・書名:悪の教典
    ・著者:貴志祐介
    ・定価:上1,714円 下1,714円
    ・出版社:文芸春秋
    ・発行日:2010/7/30
    ◆おすすめ度◆

  2. 『悪の教典』貴志祐介

    「悪の教典」(上下)貴志祐介 文藝春秋社 2010年(初出別冊文藝春秋)
    町田の高校の英語教師蓮実は生徒の人気者。授業をこなし、叱るべきは叱り、生徒の面倒見もよく、同じ高校の暴力教師ともやる気がないでもしか教師とも一線を画している。担任を受け持っている2年4組で起こるいじめや暴力、カンニングにも懸命に手を尽くし、出来る教師として仕事をこなす。しかし、何かがおかしい。蓮実は妙に心理テストに詳しい。蓮実は妙に格闘技に詳しい。蓮実は妙に策士である。その違和感が・・・
    いやいやいや。うまい。上下巻と分厚いのにあっと言う間に読み終えてしまった。学校+サイコ=好きな人にはたまらないし、そうでない人には嫌悪感でいっぱいになるような作品となった。
    全部で12章ある。第10章はちょっとどうなのかなと思った。それと散弾銃はちょっとなとも。しかしそれ以外、少しずつ明らかになる蓮実の過去とその描き方、用意周到な様など実に読ませる。11章と終章の終わらせ方は悪くない。
    映像化されることを強く意識したような書き方も小説というより、脚本に近いように感じた。描写が細かい割りに、それってどうなのよ?というツッコミを入れたくなる。それが物語の瑕疵であるとは考えずに、全体として楽しめればよいのではないかと思いながら読んでいた。サイコとサイコパスは違うという台詞が出てくるが、まさにその違いを味わうことができる、と言ったら変な褒め方になるだろうか。
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  3. 貴志祐介/「悪の教典 上下」/文藝春秋刊

    貴志祐介さんの「悪の教典 上下」。
    「俺には感情がないらしいんだ」。生徒からの絶大な人気を誇り、職員室やPTAの間でも信頼の
    厚い教師、蓮実聖司(はすみ・せいじ)。好青年の貌(かお)をもち、高いIQを誇る蓮実の
    正体は、決定的に他者への共感能力に欠けた反社会性人格障害(サイコパス)だった――。暴力
    生徒やモンスターペアレント、集団カンニングに、淫行教師。現代の学校が抱える病理を自らも
    内包する私立学園に起きた惨劇とは(あらすじ抜粋)。
    貴志さんの新作。上下巻で分厚いので『…

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