【書籍】月と蟹(道尾秀介)感想

文庫化されないかなぁと思いつつ待てど暮らせど文庫化されない(2013年文庫化されました)ので仕方なくハードカバーで買いました。ま、マケプレで買ったから文庫より安いんですけどね。

小学生のフクザツな人間関係は楽しいwけどラストはいただけない

読後の第一印象。
「惜しい」
この一言につきます。

全編、国語の教科書にでも載ってそうなちょっとすました優等生な文章が綴られている中、その実態は少年少女のウチに秘めたどす黒いものをかき混ぜるような気持ちの悪さを醸し出してて私としてはかなり大好物なジャンルではあるんですが。

ただラストが頂けない。不完全燃焼ですよ。吉村達也さんの作品のようなラストを放り投げる感じのいい加減なおわらせ方ではなく、アクセルを踏み切れないもどかしさを感じるおわらせ方。余韻を残すというより、イラッと来る感じ。それが非常にもったいないです。

あらすじはシンプル。都会から田舎に引っ越してきた慎一、同じく引越し組の春也。二人はそれぞれ別の理由でクラスメイトからは疎遠で、いつも二人で遊んでいる。ある時、二人はヤドカリを焼いて願いを叶える「ヤドカミサマ」という遊びを行う。この「ヤドカミサマ」にお願いしたことが現実に起こっていく・・・。このストーリーにそれぞれ慎一、春也、そして鳴海という少女とお互いの家庭環境が絡むことで物語が進んでいきます。(ぶっちゃけそれ以外の登場人物は皆無です。)

※ネタバレ多数のため、ここからは未読で読む予定があるなら読まないほうがいいです。

読んでて、途中から貴志祐介さんの「青の炎」を彷彿とさせる雰囲気で中盤は特に楽しかったです。自分が引き入れたはずの鳴海はやがて春也にどこか恋心を寄せ始めて疎外感を感じたり、その春也は、慎一が「春也がいなくなればいい」と願ったと分かって自ら怪我を負う。途中から慎一が、精神が晴れて(やや壊れてというか自暴自棄に近い状態になって)いく様は描写力も混じって、読みながら私自身もそれまでの気持ち悪さが抜けて清々した気持ちになりました。そこまでは本当に面白いと思いました。

が、最後にひっくり返りましたよ。それまでヘタレだった慎一が再びヘタレになってしまうなんて。。この手のラストは最後のカタルシスが楽しいのに。だーれもなにも変わらないなんて。。慎一が転校すること終わるなんて予想も出来ませんでした。

結局は、慎一は爺ちゃんは死ぬわ、失恋して転校するわ(ラストの鳴海の発言もえぐいよね)踏んだり蹴ったりで幕を閉じるわけですよ。てっきり春也の父親は春也に殺され、鳴海の父も春也に殺され、最後の春也の願いは慎一を殺すことだと思って読んでた私のワクワク感は蟹が泡噴くように消えて行きました。
残念。。

慎一以外は、多分このあと楽しい学校生活送ってるんだろうな。そう思うと、非常に釈然としない気持ちになります。そういう意味では、この作品、学校の教科書に載ってそうな文学的な作品ですよね。あーー。でも、つくづく惜しい。。もっとも、あんま無茶やらなかったから直木賞取ったのかも。このくらいなら映画やドラマ化もしやすいし。


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makapy
ゲームと本と映画が好き。日常の生活で買ったり使ったものを紹介しています。