昨年亡くなった今敏監督の初監督映画「パーフェクトブルー」を観ました。「アイドル」「ストーカー」「インターネット」というのが物語のキーワード。90年台後半、Windows95が出てインターネットが少しずつ一般家庭に普及して行き始めた時代のお話です。
アイドル×サスペンス物、と思いきや…
ストーリーは、3人アイドルユニットのCHAM(チャム)のメンバーである主人公の未麻が、メンバーを脱退して女優になるところから始まります。女優になって連ドラの役をもらい、そこでストリップ嬢でレイプされるっていうシーンをとったあたりから状況が一変。周りで関係者が殺されたり幻をみたりし始める、という内容です。
公開されたのが1998年。98年ってまだamazonも日本でサービス始めてないような時代で、企業サイトはほとんどなくて個人ホームページが主流の時代。だからといってこの手のネット系の話がなかったかといえば、全然あってむしろ今よりも多いくらいでした。ツイッターが流行った時にいろんな所で取り上げられたじゃないですか。そんな感じだから、流行りっちゃ流行りに乗ったと言えなくもないんですが、なんか面白そうだったのと評価が高いのでちょっと見てみたくなったんですね。
現実か夢かが分からなくなるサイコスリラーな感じがいい
で、実際に観てみたら面白かったです。コアなファンが付きそうな作品だというのも凄く分かります。実際に人が死に、誰が殺したのかの犯人探しをしたくなってきますから続きが見たくなりますからひっぱりも申し分なし。(この辺からネタバレ含みますので、観たいなら読まないでください。サスペンスのネタバレなんて見る前に読んじゃダメです)
ただ途中からダレてしまいました。現実と妄想の入れ子構造ってのが売りらしいんですが、中盤から結構な時間この状態が続きます。クドいです。途中から人殺す(殺される)妄想→ベッドで起きるの繰り返しになります。現実→妄想っていうのが単純に交代してるわけでもないようで、どれが現実か見てる人にもよく分からない気持ち悪さに見舞われます。たぶんそれは狙った演出だとは思います。ですが私はあんまり好きじゃない方法です。いや面白いんですよ。私が好きじゃないってだけです。
(ネタバレ)ちょっと気になるところもあるけど今見ても面白いと感じる
犯人はやたら未麻の個人行動や癖を知り尽くしていることと、この時代に偽のホームページを作れることからインターネットにはそれなりに詳しいことを考えれば、誰が犯人なのか予想するのはそんなに難しくはないと思います。ラスト間際になる頃には、実際にレイプされかけ服がズタボロなのに妄想で片付けるとか、ちょっと無理すぎじゃ…というシーンも。ラストの犯人に追いかけられるシーンは未麻の幻影じゃなくて実際の姿のほうがホラーっぽくてよかったのになぁと見てて感じました。
といろいろありますが、10年以上も前の作品でしたが楽しめました。少なくともパプリカよりは面白かったです。パプリカはラストが収集つかなくて放り出した感が満載でしたが、この作品はラストはしっかりまとまってます。97年にこんなサスペンスというよりサイコホラーなアニメ作品が、しかも映画で公開されているということが素直にすごいなと思います。ちょうどこの頃からですよね、日本でサイコホラー的な作品が広がり始めたのって。黒い家もこの年に発売されていますし。