ライトノベル

NHKにようこそ!(滝本竜彦)感想

気が付けば一気に読んでた。
かなりキレた作品だけど面白い。
冒頭から半ばまでのパラノイアっぷりは強烈。
!!注意!! ネタバレあります !!注意!!

足掛け4年。大学中退のプロフェッショナルなひきこもりの主人公。宗教勧誘のおばちゃんに連れだっていた少女に出会ったことで活動的な動きを示し始める。ただ、隣に住んでた後輩に影響され、活動的な動きはかなり危ないベクトルへ向けられていく。ロリコンのひきこもりとなってしまった自分への逆療法として小学生を盗撮する自分を後輩に撮る様に命じた主人公だが、気が付けば隣にいたのは宗教少女だった。次に会ったとき少女から謎の契約書を渡される。それはひきこもり脱出プロジェクトの契約書だった。

クスリを決めた主人公と後輩から噴き出される心の叫びは支離滅裂だが妙に生々しい。
とりわけ小学生盗撮シーンやエロゲー製作シーンのキレ具合はコワい。
背筋が寒くなる。
そういったキレた後のへこみ具合も尋常じゃない。
本当に悲しみが伝わる。
これは作品全体を通して言えるが、主人公の気持ちが露骨に表現されている。
小説は登場人物の心情を表現し、シナリオは登場人物の行動を表現する。シナリオの入門書によく書かれているが、ここまで露骨に心情を表現している小説はすくないのではないだろうか。
WEB日記っぽいというかBLOGっぽいというか。
それが身近さを感じさせる。

この作品には対照的な2人の女性が登場する。1人は高校時代の部活の先輩。もう一人は謎の宗教少女、岬ちゃんだ。
先輩は決して物語の主軸に入ることなく、間奏曲のように現れる。高校時代の回想であったり近況報告の1風景であったり。それは非日常的な主人公の生活と現実世界をつなぐ唯一のパイプのように見える。
反対に宗教少女岬ちゃんは、主人公が間の悪いときを見計らったようなお約束の場に登場し、この手の小説にありがちな年下の元気な子とは違った現代的な冷めた子として現れる。もっともそれは、今までの生活環境のせいで感情表現が苦手なだけであることが作品の節々にでてくる。
後半部は、主人公とこの岬ちゃんとの心の交流が描かれていくが、その一方、後輩のキレ具合がますますエスカレートしていく。ただ、全体的にはずいぶんと勢いがダウンしていくとともにひきこもりのテーマからやや外れた内容、というか岬ちゃんメインのストーリーとして展開していく。
ここが私にとってはやや残念だった。
確かに、ひきこもりだけで物語を展開していくのは厳しいかもしれないが、この辺から青春物語のような展開になってしまって、物語が小さくなったように感じられた。

エピローグで主人公は頑張る決意をする。それは1枚の契約書の為だとして締めくくられている。もっとも本当にそれが原因というわけでもないだろう。人間が生きる為には、どんなものであれ生きる理由が欲しい。そんな気持ちが伝わってきた。
全体を通してあっさりとした文章だが、その実中身はかなり風刺の利いた作品で大変楽しくよめた。


P.S.
「お前の革命はどこにある?」(Byクーデタークラブ)
読んでて思い出した。

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makapy
ゲームと本と映画が好き。日常の生活で買ったり使ったものを紹介しています。