【本】貴志祐介「鍵のかかった部屋」レビュー

貴志祐介さんの「鍵のかかった部屋」を読み終えました。新幹線の中で(笑)。

本書に掲載されているのは4編。

・佇む男「野性時代」2008年5月号
・鍵のかかった部屋「野性時代」2008年12月号
・歪んだ箱「野性時代」2010年5月号
・密室劇場「野性時代」2011年7月号

書き下ろしは一切ありませんでした。。
残念。

物語は「元泥棒現防犯コンサルタントの榎本と自称敏腕弁護士の青砥純子が、密室トリックを暴く推理小説モノ」です。

貴志祐介氏の推理小説について思うこと

ほぼシリーズ化した感がありますね。

最初登場したのが「硝子のハンマー」。それまでサスペンスホラーな作品を書いていた貴志さんが、この前の青の炎から作風が変わり始めかけ、その後二人が登場する短編集「狐火の家」が出て、本作が発売という流れです。

狐火の家までは、ただ2人が出て解決という流れでしたが、本作からシリーズならではのパターン化が図られているような印象を受けました。榎本が確信に迫る密室の肝の前に青砥の的はずれな意見を挟ませるという、軽く邪魔なパターン化が。

正直に書きますが、本書、というか貴志さんの推理小説はそこまで面白く無いと思います。短編もあまり向かないんじゃないかと。その中で本書のタイトルにもなっている「鍵のかかった部屋」は比較的面白かったかな、と。

それでも、出だしでかなり読む気が失せましたが。ちょっと出だしを書きます。本当に小説の出だしです。この文章の前に何かあったわけではありません。

 呼び鈴に伸ばしかけた手が、宙で止まった。
 会田愛一郎は、逡巡していた。今さら、どんな顔で、あの子たちに会えばいいのだろう。
五年間という長い不在を、どう言い繕えるというのか?
 初めてこの家を訪問した時の記憶は、昨日の事のように鮮明だった。姉のみどりは、行方不明だった不肖の弟を温かく迎えてくれた。大樹と美樹は、小学生の低学年だったが、突然現れた胡散臭い叔父に初対面から懐いてくれ、うるさいくらいにまとわりついてきた。その時の驚きと感動は、今も胸の奥にある。高校生の時に家を飛び出して、ずっと孤独な生活を送ってきた自分が、束の間、家庭というものの温もりを味わわせてもらったのだ。

最初この出だし読んだ時???でした。

家族構成が全く分からんw
まぁ私が読解力が無いだけかもしれませんけどね^^;

短編だからつめ込まないといけないのは分かりますけど、ちょっとキツイっすわ。
それにしょっぱなこんな文章付きつけられてたら、うわっと思っちゃいます。

貴志さんの作品って、どれも掴みで惹きつけられるんですが、なぜか推理ものになると出だしで興味がわかないんですよね。もともと人物の感情表現が薄めなのが貴志さんの特徴ではあるんですが、それが推理小説になると説明臭さと相まって、さらに希薄な印象を受けてしまいます。

この「鍵のかかった部屋」も犯人の父親がサイコパスなんですけど、ずいぶんとさっぱりした書き方で。せっかくのキャラなのに不気味さがあんまり感じられなく『もっと怖がらせてくれよ』と感じました。

ふと思ったんですけど、父親は教師でサイコパスってことは「悪の教典」の蓮実と被りますね。本作が2008年で悪の教典が2010年、もしかしてこの教師が原点だったのかも。そう思うとちょっと面白いですね。

肝心の推理部分は、こんなのほんとに出来るのかよ、って思うものばかりなので、あんまり真剣に考えてもいけないんだろうな。貴志祐介さんには、やっぱり推理ものよりサスペンスホラーを書き続けて欲しいと。どうせ続編書くなら「クリムゾンの迷宮」の続編を書いてくださいと心から願います。


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makapy
ゲームと本と映画が好き。日常の生活で買ったり使ったものを紹介しています。

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