私はホラーが好きで別段それを隠すこともしてないので、たまに知人友人がおすすめものを紹介してくれるわけですが、本作もその中の一つ。
ジャック・ ケッチャムの「隣の家の少女」です。ジャンル的にはサイコホラーに分類されるのかな、人間の怖さを描いた作品です。
「隣の家の少女」の冒頭あらすじ
ある日、主人公の少年デイヴィッド(たしか12,3歳くらい)の隣の家に、交通事故で両親をなくした二人の少女が引っ越してきます。
隣の家には父親が失踪して母と3人の男の子が住んでいます。
二人の少女はこの家族の親戚でしたが、身寄りが他にないとのことで引き取られたようです。
デイヴィッドはお隣さんとは非常に親密な付き合いをしていて、よく寝泊まりをしていました。
少年は姉のメグに恋心を抱きますが、両親をなくしたという境遇の少女にどう話せばよいか分からず暫くの間は自然と避けて生活をします。
しばらくして、メグと話した時、ルース(隣の男の子たちの母親)に嫌われているようで辛いという感じの話を聞きます。
まだ幼いデイヴィッドは、どちらかと言うと昔から知っているルースやその子供である友人の男の子たちを批判されているようで、メグの話を思い込みや勘違い程度に受け止めていました。
ところが日が経つに連れ、隣の家を行き来していると、徐々にメグやその妹であるスーザンに対するルースのあたりや、息子たちである友人の態度に違和感を覚え始めます。
次第にメグを見かけなくなり、ある時、隣の家に行ってみると、使われなくなった地下室にメグは監禁されルースたちに虐待を受けていることを知ることになります。
この辺が小説の折り返し地点です。
主人公に苛立ちしか感じない
その後、延々と虐待がひどくなっていく過程と、デイヴィッドの心情の揺れ動きが描かれています。
当初、恋心を持っていたはずのメグに対し、虐待を傍観しているうちにメグが汚らしいものに思えて、途中から興味を失せ始めます。
結局最後のほうで良心を取り戻して何とか助けようと努力をするのですが。
読んでて、とにかくデイヴィッドに対してムカつきしか覚えず、始終イライラしてました。
「僕が虐待しているわけではない。傍観者だから僕は悪くない」
そう言い訳じみた言動や行動が端々に出ている上、うまく立ちまわってルースたちの標的にならないように、かつメグに恩を着せれるような言動や行動を意識的にやっているというゲス野郎です。
メグは悪いことをしたんだ。だから酷いことをされても仕方ない……ねーよ。アホか、と。
※この辺よりラストのネタバレ含みます。
スティーブン・キングの巻末の解説が全く共感できない
こんな序盤なので本作の本編も、想像通りの酷いものでしたが(作品的には素晴らしいと思いますが)、更に輪をかけてひどかった(これは内容的な意味で)巻末の解説です。
この解説書いてるの、スティーブン・キングです。
最も理解不能な箇所が以下の文です。
『読者はデイヴィッドを哀れむ。ルース・チャンドラーを密告することをためらう気持ちを理解する。何しろルースは、子供を、いつもまとわりつく邪魔者ではなく、人間として認めてくれるのだ。だから読者は、実際に何が進行しているのかを把握できなかったばかりに、けっきょく少女を救えなかったデイヴィッドを理解するのだ』
理解するのだ?
いやいやいやいや、しませんから。絶対理解しませんから。
別にそこまで邪魔者扱いなんかされてないでしょ、デイヴィッド。
むしろ一見普通の子供って体を装ってるデイヴィッドも相当問題児でしょう。
ルースは中学上がるかどうかって子供に常習的にビール勧めて飲ませるような大人だし、その話に乗ってビール飲むことに何の罪悪感も感じない精神をしてるのがデイヴィッドですから。
虐待されている過程が、まるで映画を見ているようだった、とか、映画(虐待のことね)の続きを見るために隣の家に行った、とか、もうヤバいって、それ。
好きだった子が虐待されてるのを延々見ての感想がそれって……同情とか共感とかとても出来ません。
スティーブン・キング本人が本当に解説書いてるんだとしたら、本人がホラーだわ。
作品自体は、読む人を思いっきり選びますが面白かったです。
読書とか映画鑑賞は「製作者との真剣勝負だ。切るか切られるかだ」と思うような人にはお勧めです。
精神的にキッツイの見たくないです、日常系おいしいです、みたいな人は間違っても読んじゃいけません。
この小説はコンクリ事件を思い出す
私的に、この作品を読んでて真っ先に連想したのは平成になった折に明るみなった「女子高生コンクリート殺人事件」でした。
本作と同じように未成年がたむろって女子高生を拉致監禁、強姦・傷害を繰り返し殺した上にコンクリートに詰めて放置した事件。
コンクリ事件の犯人は殺人以外にも傷害事件や窃盗・強姦を繰り返していました。が、逆送され一般裁判にかけられたものの少年法により極刑を免れ、現在は刑期を終えて日常生活に戻っているはずです。(主犯格でも懲役20年でしたので)
この事件についてはこの本が詳しいです。
ただ、私はこの本はあまり好きではありません。
事件が時系列的に書かれているので、概要を知る上では大変読みやすく理解しやすい点はありますが、いかんせん内容が少年側に寄りすぎていて、ずっと言い訳を聞いてるような印象を受けます。
そういった意味では、この隣の家の少女と同じ印象です。
親もちょっとどうかと思いますが。
女子高生を監禁といっても普通の民家の1室ですよ。育ちよさ気な少女がいたら不思議でしょうに。
家に帰そうとしても子どもたちが連れて戻ってくるから、無理に返そうとしたら暴力振るわれたから、といいながらも、殺人事件と分かったら、家庭内暴力くらいはどこの家庭でもあるものだろうから警察にも相談しなかったって、なんかチグハグですね。
結果、この女子高生もメグも、虐待の末の外傷性ショックで死んでるという。
ちなみのこの事件、警察が捜査の末たどり着いたわけじゃなくて、別件でしょっぴいたらたまたま勘違いして罪を白状したという完全にひょうたんから駒の逮捕です。
さらにこの別件というのは「綾瀬母子殺人事件」で、嘘の自白をした少年達に振り回された挙句、最終的には未解決事件となり時効が成立しました。
はじめまして。
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ブログを拝見したのですが、ぜひ読書ログでもレビューを書いて頂けないかと思い、コメント致しました。
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