貴志祐介さんの「ダークゾーン」レビューです。3月に人から「でてるよ」って言われるまで全く気づかず急いで買って読んでおきながら、まだ書いてなかった。
“軍艦島”を舞台に描く、悪夢の世界!
情報科学部学生で日本将棋連盟奨励会に属するプロ棋士の卵である塚田は闇の中で覚醒した。十七人の仲間とともに。場所も状況もわからぬうちに始まった闘い。人間が異形と化した駒、“敵駒として生き返る戦士”などの奇妙な戦術条件、昇格による強力化――闇の中、廃墟の島で続く、七番勝負と思われる戦いは将棋にも似ていた。現実世界との連関が見えぬまま、赤軍を率いる塚田は、五分で迎えた第五局を知略の応酬の末に失い、全駒が昇格する狂瀾のステージと化した第六局は、長期戦の末、引き分けとなった……。
いきなり訳の分からない場所、状況に放り込まれるという点、誰かに殺されようとしている点など同じ著者の「クリムゾンの迷宮」にかなり似た話かな、と読み始めは思い、とてもわくわくしながら読み進めました。
ひとことで言うと「人間チェス」って感じです。
それぞれのコマはギリシア・ローマ神話の神の名前が付けられてて、それに見合った特技があてられてます。(さすがにポーンの名前は違うけど。)
主人公はキングになって、そのコマたちに絶対的な命令を出すことができ、敵のキングのコマを取るゲームに参加しているようです。と、ここまで読んでチェスネタなら、ラストは「キャスリング」だろwなんて思いながら読んでました。プロモーションという、将棋でいう「成り」までこのゲームには存在するんですから。ま、オチは隠します。
貴志さんの作品の中では、可もなく不可もなくといった作品でした。「硝子のハンマー」と同じくらいかな。新世界よりのようなワクワク感はなかったですし、黒い家やクリムゾンの迷宮のような追われる緊迫感というのもあまりなく。
このゲームっていうのが、先に4戦したら勝ちというルールなので、死んでも次があるんですね。だから、何回もやられてるうちに、死ぬって感覚が薄らいじゃったからなのかも。
確かに最初死ぬまでは結構面白く読んでたんですよね。なんでこんな似たことを7戦もさせるんだろ、と思いましたが、それもそのはず、この作品が月刊誌の連載だから。
連載ったって、その中で起承転結付けないと面白くないから、物語を作り易いこのような形にしたんでしょう。戦闘シーン多すぎって感想もあるのは、本当にモロに感じますよね。
おかげで、半ばからダレるダレる。。似たものの繰り返しは同じ山でも、山の起伏が弱くなるから。
そしてあのラストですよ(爆)そりゃないよ。
貴志さんは長編でこそ、素晴らしい作品を出してくれるんだなぁとしみじみ感じることが出来る作品だと思いました。と若干辛口になってますが、作品自体は十分面白いです。貴志さんの作品を好きすぎるから期待値が半端ないだけです。
雑誌連載だと、書くのが大変でしょうが、ぜひ貴志さんらしいハラハラさせてくれる作品を期待してます。この手の手法はもう使えないはずだから、次は登場人物が同じなのにストーリーも役割も毎回全く異なるみたいなものを出してきたりして。なんていうんだっけ、こういうの。忘れた。
ダークゾーン//貴志祐介
ネタバレ注意
本の中に「民主党の管代表」って文が出てきたから
後ろめくってみたら初版発行が今年の2月だった
いつもコレ書く前に
googleのブログ検索で、他の読者の考え方を見るのだけれど
この本についてはあまり高評価な記事がなかった
特に女性の読者は「ゲーム好きなら…」「将棋好きなら…」みたいな感想ばかり
個人的にはかなりおもしろかった
この前に読んだ伊坂幸太郎の本の1.5倍くらいの分量があるけど
それを感じさせないくらいスラスラ読めた
「青の炎」や「天使の囀り…